さて、前回買いに行った、カブレにくいうるし「NOA」。
どれくらいカブレにくいのか?
それを実験してみたいと思います☆
まず、公開されている特許情報を参考にすると、
カブレの状態を測定する手法は下記のように記載されています。
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漆の接触試験(以下パッチテストという)は、人体の上腕若しくは前腕の内側の皮膚に直接漆を直
径5mm程度の大きさに3分間静置した後、布で拭き取り、シンナー等の溶剤で更に拭き取ったのち、石ケン水で洗浄した。
カブレ発症状態の判定方法は24時間後に次の基準に従って目視で判定した。発症なしを0、赤斑
の軽度を1、やや軽度を2、やや重症を3、重症を4、水泡の軽度を5、重症を6、潰瘍を7として判断し記録した。被験者はアルファベットで区別し・・・・。
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そして同じ文献から、同一の被験者に「普通の漆」と「カブレにくい漆」でパッチテストを行った結果が下記の表です。
(※ こちらで元文献には無い「被験者」「普通の漆」「カブレにくい漆」のラベルを付けています。)
お~、すばらしいぃ(=´Д`=)/
これによれば、「普通の漆」に比べて「カブレにくい漆」での接触の方が「カブレ」の症状が劇的に軽度ですんでいることが判ります。
しかし「普通の漆」による接触においても、A~Rのいずれの被験者も症状の判定が1~3の比較的軽度な症状に収まっています。
ところが、実際にうるしを使って塗装作業をして漆にカブレるとこういうことになります((((;゜Д゜)))
前出の判定方法によれば、水泡の重症=6といったところでしょうか。
もちろん、この水泡も、うるしの液に接触したからといって何もいきなりできるわけではありません。
同じく、カブレ発症状態の判定方法にあるような1⇒2⇒3⇒4⇒5⇒を経て、この状態の水泡ができるわけです。
さらに写真のこの水泡だらけの腕は、(見るに堪えないので画像はありませんが)水泡が破れてリンパ液でじゅるじゅるに潰瘍化した症状7へと最終的には進んでいます。
(うるしカブレは、一度でもうるしが付着すれば必ず症状7までいくか、といえばそうではなく、軽度の症状でそのまま収束していくこともあります。詳細は材料説明「うるし」のタブのカブレについての記述をご参照ください。)
この写真のような、うるしを扱っている職人さんなどに認知されている「うるしカブレ」と、比較的軽度ですんでいる前出のデータとの差は、試験方法の「接触時間が3分間静置」と、「24時間後に判定」という条件にあります。
一般にうるしカブレは、「皮膚にうるしが付着した時間」が長いければ長いほど症状が重篤化します。
またカブレの症状は接触後、時間をおいて徐々に進行するため、最終的に5や7に達するカブレ具合であっても、「24時間後現在」では1や3であることが考えられます。
もともと特許文献は、従来のものと新しい技術によって可能になったことの差異にスポットを当てるものです。
なので、この情報からだけでは、「実際にうるしを使って作業した時の長い時間の付着によるカブレの最終的な症状のレベル」はよくわかりません。
そこで、この情報を参考にしつつ、
「カブレにくいうるしでは一体どの程度の症状までカブレが進行するのか?」
を自分の腕で実験したいと思いま~す (o^∇^o)ノ
買ったばかりのカブレにくいうるしを開封し、
うるし液を綿棒につけて・・・、
先の試験方法と同じく、前腕の内側の皮膚に5ミリ径程度のっけていきます ・・( ´・ω・)フアン
今回は、3スポットのせてみました。
うるしを接触させてから除去するまでの時間を、
特許文献の試験と同じ3分、
それに30分、3時間の2つの条件を加えて、
うるしが付着していた時間の差によるカブレ具合の差をみることにします。
うるしを付着させてから3hr、30min、3min後にそれぞれ拭き取ります。 |
そして、拭き取ってからのカブレ症状の変化を、時間の経過を追って観察していきたいと思います。
それでは、まずは拭き取り時間直後の様子です。
接触から3分後、拭き取った状態。 漆がついていた痕跡もカブレもありません。 まったくかゆくない。 |
接触から30分後、拭き取った状態。 漆がついていた痕跡もカブレもありません。 まったくかゆくない。 |
接触から3時間後、拭き取った状態。 漆がついていた痕跡とその周辺が赤いあとになっています。 症状の判定は「赤斑の軽度=1」といったところでしょう かゆみはありません。 |
そして、拭き取り後6時間後の様子です。
接触から6時間後 (接触⇒3分後拭取り) 漆がついていた痕跡が赤いあとになっています。 症状の判定は「赤斑の軽度=1」より軽いが0じゃない。 かゆみはまったくありません。 |
接触から6時間後 (接触⇒30分後拭取り) 漆がついていた痕跡とその周辺が赤いあとになっています。 症状の判定は「赤斑の軽度=1」 わずかにうずがゆい感じはしますが、手で掻きたくなるほどではありません。 |
接触から6時間後 (接触⇒3時間後拭取り) 漆がついていた痕跡とその周辺が赤いあとになっています。 症状の判定は「赤斑の軽度=1」 わずかにうずがゆい感じはしますが、手で掻きたくなるほどではありません。 |
そして、拭き取り後24時間後の様子です。
これが先の試験と同じ条件です。
接触から24時間後 (接触⇒3分後拭取り) 前日、わずかに赤くなっていた部分の赤みが引いて、色素沈着しています。 症状の判定は「0」、かゆみはまったくありません。 経験上、これはもう「カブレが治った」と言える状態です。 |
接触から24時間後 (接触⇒30分後拭取り) 漆がついていた痕跡とその周辺が赤いあとになっています。 症状の判定は「赤斑の軽度からやや軽度=1~2」くらいでしょうか。 少し手で引っ掻きたくなるかゆさです。 それでも、蚊に刺されたよりはマシです。 |
接触から24時間後 (接触⇒3時間後拭取り) 漆がついていた痕跡とその周辺が赤いあとになっています。 症状の判定は「赤斑のやや軽度=2」でしょう。 蚊に刺されたような状態で、手で引っ掻きたくなるかゆさです。 |
こうして、24時間後の状態で特許文献の試験方法と同じ条件である接触後3分の部位をみれば、この試験の多くの被験者と同じく、その症状を「発症なし=0」と判定することもできます。
しかし、あいだの接触後6時間の患部の様子を見る限り、「発症なし」ではなく、「きわめて微弱なうるしカブレがすでに治った状態」とするのがより正しいかもしれません。
また、同じ私の腕でもうるしを30分、3時間と、より長く接触させた患部は、その分だけカブレの症状が進行しており、これは先の文献の被験者においても起こりえたことではないかと類推されます。
さて、さて、24時間後でこんな感じですが、このあとどれだけカブレが進行するのか?
と言っても、一番長い3時間もうるしを接触させていた幹部でさえ症状「2」、ほんの少し赤らんでかゆいだけです。
これが普通のうるしであれば、腕がパンパンに腫れて掻きむしっている頃でしょう。
症状の判定で言えば「赤斑重症=3~4」は確実です。
こうなると、経時でさらに5以上に重篤化してくることが予想されます。
そんな十分すぎる被害が想定されましたので、今回、比較用にもう片方の腕で「普通の漆」にカブレてみる勇気が出ませんでした・・・(ノд・。)
経験則からいえば、24時間後でこの程度ですんでいるのであれば、一番長い3時間接触の患部もこれ以上の重篤化はなく、このまま治癒に向かっていくだろうと考えますが、まぁ、追って見ていきましょう☆
そして、拭き取り後48時間(2日)後の様子です。
接触から2日後 (接触⇒3分後拭取り) 色素沈着もほとんど消えています。 完治したといってよいでしょう。 |
接触から2日後 (接触⇒30分後拭取り) 赤斑の赤みがひいてあとが色素沈着気味です。 症状の判定は「0~1」くらいでしょうか。 わずかにうずがゆさが残りますが、ほぼ治っているといっていいでしょう。 |
接触から2日後 (接触⇒3時間後拭取り) 漆がついていた痕跡の周辺の赤みがひいてきています。 症状の判定は「赤斑のやや軽度=2」でしょう。 少しましにはなりましたが、依然蚊に刺されたようなかゆさです。 |
2日たって、3分接触の患部は完全に治癒しました。
また、30分接触の患部でもカブレが終息してきました。
そして3時間接触の患部も、より赤斑がひどくなったり、水泡ができるなどの重篤化は無く、治っていく方向で推移しています。
拭き取り後72時間(3日)後の様子です。
接触から3日後 (接触⇒30分後拭取り) 赤みは完全にひいてあとが色素沈着しています。 かゆみもまったくありません。 ほとんど治ったといっていい状態でしょう。 |
接触から3日後 (接触⇒3時間後拭取り) 全体的に赤みがひいてきつつあります。 症状の判定は引き続き「赤斑のやや軽度=2」でしょう。 蚊に刺されたよりはかゆくなくなりました。 |
拭き取り後96時間(4日)後の様子です。
接触から4日後 (接触⇒30分後拭取り) 色素沈着しています。 はい、もう治りました。 |
接触から4日後 (接触⇒3時間後拭取り) 全体的に色沈着へ向かっています。 症状の判定は引き続き「赤斑の軽度=0~1」でしょう。 ほとんどかゆくなくなりました。翌日には治る見込みです。 |
拭き取り後120時間(5日)後の様子です。
接触から5日後 (接触⇒30分後拭取り) カブレは治って、色素沈着しています。 色素沈着が無くなるまで、このあと1週間程度かかります。 |
接触から5日後 (接触⇒3時間後拭取り) カブレがひいて色素沈着しました。 まったくかゆみもなく、治ったと言えます。 こちらは、色素沈着が無くなるまで1~2週間かかりそうです。 |
と、いうような感じで、
今回最も長い3時間の間うるしが接触していた患部もおおよそ5日間でカブレが終息し、ひどい腫れや水泡が出るなどの重篤化には至りませんでした。
比較用に普通の漆を3時間腕に塗ってカブレてみせる勇気がないのが申し訳ないですが、それだけこの「カブレにくいうるし」でのカブレが軽度ですんだということになります。
もちろん、体質による個人差がありますので、このうるしでもこっぴどくカブレてしまう方がいらっしゃるやもしれません。
ですが今回、ワンスポットながら自分の体で実験してみた結果と、普段の「通常の漆」でのカブレ具合から勘案するならば・・・。
「カブレにくいうるし」は「通常の漆」と比して、カブレるかカブレないかでその確率が低いものというよりは、「通常の漆」よりも皮膚との反応性が低いため、カブレたときの症状が総じて低減されるうるし、という感じです。
その結果、「通常の漆」では軽度のカブレを引き起こす条件でうるしが付着したとしても、この漆の場合ならばカブレの症状が発現しないとか、同じく、「通常の漆」ならば重篤なカブレを引き起こす様な条件でうるしが付着しても軽度の症状ですむ・・といった種類の「カブレにくさ」を持ったうるしという感じでしょうか。
もちろん大前提として、うるしを使った作業においては手袋などの適正な保護具を着用して、体にうるしを付着させないことが大切です。
しかし万が一、体に付着させてしまったとしても、これならかなり軽度のカブレで済みます。
DIY☆うるし部では、このカブレにくいうるし「NOA」を使って、これからイロイロ作っていきたいと思いま~す(o^∇^o)ノ
あ、そうそう、ちなみに今回の実験はあくまで私の体でやったものです。
最初の方に出た特許文献の表のように、カブレの症状の発現には個人差があります。
そのため、もしかしたら人によってはこのカブレにくい漆でも、冒頭の水泡だらけの腕のように重篤なカブレ症状が出てしまう人もいらっしゃるかもしれません。
万が一、そうしたことになったら、直ちに漆の使用を停止して、皮膚科の専門医の診断を受けてください。
余談ですが、今回の実験のように蚊に刺された程度の軽度のカブレであれば、私の場合はムヒを患部に塗ってかゆさを誤魔化して、腫れ自体は自然治癒に任せています。
時々、「うるしカブレにはステロイド系皮膚薬」といった治療法が紹介されていることがありますが、ステロイド系の薬は副作用が強く、一見すると逆に悪化したように思える症状を引き起こすことがあります。
かゆみ止めではどうにもならないようなカブレを感じたら、やはり直ちに皮膚科の専門医にご相談ください。